「mybrownの玄米おにぎりで笑顔を取り戻す」 阿蘇ボルケーノトレイル優勝の伊東ありか選手へのインタビュー
2025年5月に熊本県阿蘇市周辺で阿蘇ボルケーノトレイル2025が開催され、発芽玄米「mybrown」を展開する株式会社オーレックホールディングス(以下、オーレック)はこの大会に協賛。エイドにおける玄米おにぎりの補給食提供や、コースの一部を整備するなどのサポートを行いました。
阿蘇ボルケーノトレイルは九州を代表するウルトラトレイルレース
今回の記事ではこの大会におけるオーレックの取り組みと、女子優勝の伊東ありか選手へのインタビューを通して、九州を代表するウルトラトレイルレースの紹介と、ウルトラトレイルにおけるエイドの重要性についてフォーカスします。
阿蘇ボルケーノトレイルでのオーレックの取り組み
阿蘇ボルケーノトレイルは約112kmを走るウルトラトレイルレースですが、普段は入れない阿蘇の草原地帯を走れることも魅力の1つ。標高935mの大観峰など、阿蘇カルデラが一望できる大パノラマの壮大な景色や、「これぞ阿蘇!」といった美しい大草原を駆け抜けることのできる素晴らしい景観が評判の大会です。

今大会の協賛企業である「OREC」の文字がゼッケンに
阿蘇地域では、1000年以上前から放牧地として利用されていた広大な草原の維持活動が長く続き、2013年からはこの地域における「草原の維持と持続的農業」が世界農業遺産として認定されています。このような場所での、トレイルレースは自然への尊重を基に、新たな景色の発見や非日常的かつ素晴らしい体験だといえますが、そこには自然保全という重要な活動が根底にあります。

阿蘇ボルケーノトレイルの絶景スポット「大観峰」
オーレックは農機メーカーとして「草と共に生きる」を企業理念に掲げ、草刈機を主力製品としています。実際にコースの一部を、ラジコン草刈機「ブルモアーRC」で整備するなど今大会へのサポートは大会前の準備段階から携わっており、このような草原保全活動は社会的に意義のある活動。それゆえに、大会への協賛は自然な流れでした。
大観峰までの道のりを上る笑顔が印象的な出場者
また、オーレックは発芽玄米「mybrown」を展開しており、今大会では最終エイドで補給食として玄米おにぎりを提供。大会前日のブース出展を含め、阿蘇ボルケーノトレイルのサポートを行いました。

補給食としてmybrownの玄米おにぎりを最終エイドで提供
トレイルレースのエイドにおける玄米おにぎりの提供は珍しいかもしれませんが、では、阿蘇ボルケーノトレイルの参加者はこの玄米おにぎりをどのように感じたのでしょうか?
阿蘇ボルケーノトレイル優勝の伊東選手へのインタビュー
今大会の女子優勝者である伊東ありか選手は、最終エイドで玄米おにぎりを手に取った1人でした。そこで、レースを終えた伊東選手にインタビューを行いました。

阿蘇ボルケーノトレイル2025女子優勝の伊東ありか選手
伊東選手は北海道出身のトレイルランナーで、今年は阿蘇ボルケーノトレイルの優勝だけでなく、4月のMt.FUJI 100(UTMF)で3位に入るなど、トレイルランのミドルからウルトラのカテゴリーで活躍する日本代表選手。
20代中盤に出産を経験するなど、この競技のエリート選手としては珍しいママさんランナーですが、「産後太りの解消でジョギングを始め、子育てのストレス発散で始めたのがトレイルランニングだった」と言います。

阿蘇ボルケーノトレイルのレース前半。笑顔が印象的な伊東選手
2021年に北海道から宮崎に移住した伊東選手は「宮崎に来てから練習環境に恵まれた」と話します。北海道ではヒグマが出る場所など安全面の問題があったものの、宮崎では「朝早くても1人で走れる」と前向きに練習に取り組み、トレイルでの練習と並行してロードでの練習にも励んで走力を向上させました。
2023年には、100マイル(約160km)レースのUTMFに初挑戦。そこで、7位入賞の成績を収め、その後ロングやウルトラの海外レースにも参戦していくようになっていきます。

宮崎を拠点とする伊東選手は九州の大会に多く出場している
2024年には、トレイルレースの最高峰ともいわれる「UTMB(Ultra-Trail du Mont-Blanc:174km)」に参戦するも、82位と悔しい経験に。
「スタートと同時に転倒してもみくちゃにされたり、動揺してしまいレースでは足も手も出ず全然走れませんでした。低酸素ルームなどで高地対策はしていましたが、標高2500m地点辺りで息ができなくて、びっくりするぐらい走れませんでした」
同年の10月には日本代表選手としてアジア太平洋トレイルランニング選手権で12位、そして先述した2025年のMt.FUJI 100で3位と徐々に存在感を高めていますが、選手としての最終的な目標は「UTMBで良い成績残すこと」と、最高の舞台での快走を描いています。
ウルトラレースのメンタリティと補給戦略
トレイルランニングでは、その定義こそないもののミドルが50km以上、ロングが80km以上、ウルトラが100km以上のレースだといわれています。UTMBはトレイルレースの最高峰であり、現在ではUTMBの大会期間中に8つのレースが開催されますが、ウルトラランナーにとっては100マイルレース(174km)のUTMB®︎が憧れの舞台とされています。 100マイルレースのMt.FUJI 100で3位に入るなど、ウルトラレースを得意とする伊東選手は、耐久的でハードなイメージがあるウルトラレースをどう感じているのでしょうか。

阿蘇ボルケーノトレイルの最終エイドを後にする伊東選手
トレイルのウルトラレースは一夜をまたぎ、眠気や幻覚、幻聴といったハードな場面に加えて、暗い夜の山道を独りで走ることもあります。しかし、「そんな時でも自分は楽しめる」というポジティブな気持ちが伊東選手の強さでもあります。
「手応えを感じたのが100マイル(ウルトラ)でした。100kmでは勝てないなという選手でも自分は100km以降でも潰れずに走れる感覚がありました。自分の強さは精神的な部分、トレイルの楽しみを1つ1つ見つけていく感覚です。キツくなったら楽しめなくなってきますが、トラブルがあれば"こうすれば良いな"と考えて答えを見つけるのが得意なのかなと」

最終エイドに入ってきた後に、十数秒ほどうずくまってしまう
しかし、約112kmの阿蘇ボルケーノトレイルの最終エイド(93km地点)に1人でやってきた伊東選手は「久しぶりに人に会えて嬉しかった」という安堵の表情を浮かべながらも、その直後にエイドで十数秒ほどうずくまってしまいました。
実は、伊東選手はレース前に怪我が治っておらず強行出場。それでも、「阿蘇は景色が良いよというのを聞いていて。"皆どっかしら痛いだろう"と言い聞かせて走りました」と、本調子でなかったことを明かします。

エイドで次第に元気を取り戻した伊東選手
それでも伊東選手は顔を上げ、友人と話しながら次第に元気を取り戻していきました。
「エイドで友達が待ってくれたり、応援してくれると、また次のエイドまで頑張れるんです。阿蘇の時はエイドで楽しくやっていたんですが、最後はさすがにキツくなってきて。でも、友達と話したり、mybrownの玄米をシチューに入れたらめちゃくちゃ美味しかった。とても、元気になれました」
伊東選手はmybrownの玄米おにぎりをシチューに入れて回復
「エイドで白米を食べると、血糖値が上がって深夜は眠くなってくるので、今回の玄米は良かったです。いつもは、エイドで"食べる"かどうか葛藤しますし、あとはジェルが合わないとか、そういうことで(補給戦略に)失敗している人も多いですね」
発芽玄米に多く含まれる食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにすることからも、ウルトラレースにもってこいの補給食。怪我をしながらの強行出場で精神的にも限界だった状況でも、玄米という補給の選択がレースの優勝に役立ったと、伊東選手はレースを振り返りました。
ウルトラレースにおけるエイドの重要性
「超長距離」ともいえるウルトラトレイルレースでは、特に競技性が高まるほど、単純な走力だけでなく補給戦略、ペース戦略、メンタル維持といった総合的なバランス能力が必要となる競技だといえます。
エイドはオンとオフを切り替える場所
とはいえ、参加者の大半はレースを楽しみに来ており、エイドでは食糧や水分の補給だけでなく、友達と会って話すなどオンとオフの切り替えをするための場所。ただし、レースの前半はまだ余裕があって笑顔でいても、ウルトラレースの最終エイドともなれば眠気や幻覚など、その場で寝てしまう人も出てくるものです。
エイドの滞在時間には個人差があり、「早く補給を済ませたい」という人もいれば、「ゆっくり一息つきたい」という人もいます。

オーレックは阿蘇の最終エイドでmybrownの玄米おにぎりを提供
伊東選手は「その時の体調にもよりますが、自分はエイドを早く出たいタイプ」と言いつつも、「海外レースなどで初めての補給食をみかけるとテンションが上がりますし、今回はレース前からエイドにmybrownの玄米があると聞いていたので楽しみでした」と話します。
ウルトラレースの戦略面もさながら、エイドの存在がメンタルや身体の機能を立て直すための重要な場面であることがわかります。

いくつかの選択肢がある中で玄米おにぎりを手に取る出場者も多かった
mybrownのブランドコンセプトは「あなたのカラダは大切にする価値がある」というメッセージ。農機メーカーのオーレックは、阿蘇ボルケーノトレイルのコースの一部を整備するだけでなく、今大会のエイドでの選択肢を、伊東選手をはじめとする多くのトレイルランナーに提供することができました。
mybrownの事業はこのような大会への協賛やイベントなどのスポーツ活動を通じて、多くの人々の食や健康をサポートするだけでなく、社会に貢献していくことを目標としています。
写真・文:河原井司